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読書感想文

目標:月2冊という意識の低いブログ

34.月下の恋人 / 浅田次郎

ちょっと疲労が溜まっていたので、いつも心に安寧をくれる、浅田次郎さんの短編集を読んだ。

 

娯楽ミステリーに慣らされてるせいなのか、伏線回収を期待してしまったが、そういうのではなかった。

 
どの話も良かったんだけれど、続きが気になってしまうものばかりなので、回収されないというのは分かった上で読んで欲しい…笑 深読みすると繋がっていたりするのかもしれないけれど。

 

最後に収録されている「冬の旅」、これだけ読んで、これが良いという人は少ないと思う。しかし、浅田次郎さんの生い立ちを知って読むと、自虐的というか、外の世界に対する一人称のリアルな捉え方を感じて、非常に切ない思いになる。

 

この話の中で、モリエールの「自然(ファジス)は善美と調和を生み、不自然(アンチ・ファジス)はあらゆる破綻を生ぜしめる」という言葉がでてくる。

 

文中で出てきたときは何とも思わなかったけれど、少年時代から折々にこれを思い出すという浅田さんの言葉を読んで、何度か読み返し、思い当たる節を思い出し、その通りだなあ〜と感じ入った。

 

自然は善美と調和を生み、

不自然はあらゆる破綻を生ぜしめる。


「忘れじの宿」という作品が一番好きだった。ライブ前の緊張ほぐしに最近よく本を読むんだけど、その時にこれ読んだので、泣くのを堪えなければいけなかったのが悔しい…

 

「しがらみ」というものは、「柵」と書く。水流をせき止めるための柵を指すそうだ。転じて「しがらみ」は、せき止め絡むように束縛となることがらを指す。つまり根こそぎ取り去らない限りは、「しがらみ」から逃れることは出来ないということだ。ということを文中で言っている。

 

確かにそうだ。逃れたいならば、関連する何もかもを失う覚悟が必要だ。この話の中では、「心に痼っている事柄を、綺麗さっぱり忘れられるツボ」を押すか押さないかの選択によって、その覚悟を促す。押したら、それに関する人の顔も何もかも忘れる。自分だったら、きっと押せないなあと思った。

 

季節感と情緒を折り重ねた、沁み入る短編集だった。桜の季節より、秋の夜長のお供の方が合っているかもしれない。お茶でも啜りながら、夜の窓際でゆっくり読みたい。